倭羊の回し蹴り

この国を憂う。映画・読書ノート、徒然なるままに。

新ゴーマニズム宣言『靖国論』 小林よしのり著

自民党売国奴の塊だった。
靖国を守るのは、国民しかいない!

 

1.おすすめ度: ★★★★★満点

2.本書を読んだ目的:

2021年年末を迎えて深く考えるようになった。来年の年末、日本は独立国としてまだ健在なのだろうかと疑問に思う。大袈裟化かもしれないが、来年2月にある冬季北京オリンピックが終わると同時に、中国は台湾へ侵攻し、次に尖閣・沖縄が占領される可能性が非常に高くなっている。この日本が中国に侵略される前に、日本人の精神性を語る上で最も大切な靖国と、それに関する問題点を整理したいと思った。

 

3.本の構成

著 者小林よしのり

出版日:2005年8月1日 第1刷発行

出版社:株式会社 幻冬舎
    
目   次
序 章 無知による靖国問題
第1章 国会議員が知らない靖国合祀の真実
第2章 戦後日本人が忘れた靖国問題の真実
第3章 日本人の魂・終戦自決烈士
第4章 始めは「国立墓地」と言っていた!
第5章 「国立追悼施設」は無駄な公共事業だ!
第6章 「靖国参拝違憲」という「傍論」の暴論
第7章 1068人の人身御供を戦勝国に差し出した日本
第8章 カミの国は死者の国でもある
終 章 無宗教の追討の果て


概要
なぜ靖国問題が全国を二分するまでに紛糾してきたのか。わかっているようでわかっていなかった歴史的背景から検証されている。それと同時に、靖国問題の原因となった戦争を裁いた東京裁判にも踏み込んで、その本質に迫っている。日本人が何年経っても忘れてはいけない精神性を見つめなおそうと本書は語る。

 

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靖国神社 無料写真素材


4.感想

読んでよかった。
生来、マンガは嫌いだったが、これはOK。
すっと心に入ってくるすばらしい内容だった。


驚いた。知らないことがたくさん書いてあった。
わたしが見切れなかった部分を小林氏はきちんと見抜いていて、とても感心した。

 

1. 保守だと思っていた自民党は実は売国奴だった
あの頃は、わからなかった。これほど自民党が保守でなくなっていたことが。
学校で左翼教育、家では朝日新聞聖教新聞で育ったわたしの歴史観は、今思っても恥ずかしいぐらいひどいものだったが、一方、保守と名乗る自民党が実はとんでもなく長い間、英霊を侮辱し、日本のあるべき姿を歪めてきたという事実はショックだった。

整理しておく。

靖国騒動の最端緒は、三木元総理だった(以下敬称略)。
1975年、彼が初めて終戦日に参拝したが、その際「内閣総理としてではなく、個人としての参拝である」と左翼メディアに媚びた。その年を境に、数年毎に行われていた天皇靖国御親拝がなくなってしまう。天皇の参拝が個人であるわけがないからである。
    ↓
同年、政府・自民党「政府統一見解」を発表。
戦後のすべての首相公式参拝「実は私的参拝だった」と訂正した。
    ↓
同年、靖国神社は、いわゆるA級戦犯とされた14柱を合祀した。
    ↓
(合祀後も、大平正芳が3回、鈴木善幸が8回、中曽根康弘が9回参拝しているが、中国・韓国はまったく騒いでいない)
    ↓
朝日新聞等の左翼メディアが猛烈な反靖国・参拝反対の大キャンペーンを展開。すると中曽根は、宗教色を排除した参拝にすると媚びを売り出し、「二礼二拍手一礼」の神道の拝礼を「一礼」だけにした。
    ↓
靖国神社が神社への侮辱としてこれに反発する。
自民党公式参拝の実現が第一だと靖国神社を説得する)
    ↓
1985年8月15日、中曽根による一礼だけの公式参拝が行われた。
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同年8月27日、中国の姚依林副首相が初めて中曽根の公式参拝を非難。
(中国による批判はこの時からはじまった)
    ↓
これ以後、中曽根は公的・私的な参拝を閉じてしまう。
(中曽根の公式参拝の取りやめは、中国の胡耀邦を守るためだったのが本質だが、それは外交上言わず、その代わりに彼が言ったのはA級戦犯が合祀されているため」と答えた。これは保守政治家・言論人をはじめ、遺族の方々の心をひどく痛めつけた。今でも中曽根はA級戦犯と呼びつけ、悪者扱いしている。
    ↓
2001年8月、小泉も終戦日に公式参拝をすると勇んだが、日にちを前倒しにしたり、私的参拝だと言い訳したり、始終コソコソと逃げるように靖国問題に対応しつづけた。
    ↓
それ以後、日本の総理大臣が終戦日に公式参拝を果たした者は一人も現れていない。


2. どこから日本の政治家の腰抜けぶりは来るのか?

ひとえに「勉強不足」からくるのだと著者は言う。
たしかにしっかりと先の大戦と多くの日本人が亡くなった歴史と意義を勉強していれば、左翼メディアや中国・韓国になんと言われようと揺らぐことはなかっただろう。

ただ、政治家だけが日本の政治を作るのではない。
ほとんどの政治家は、おおむね選んでもらう投票者の意向に沿って動く。政治家は国民の鏡なのだ。つまり、マスとしての国民の不勉強と覚悟のなさがああいった情けない政治家を増長していった。我々の勉強が足りなかったと反省する。

本書には、左翼がいかに靖国問題を利用して日本破壊を進めていったのか、戦後GHQに骨の髄まで植え付けられた自虐史観が最大限に利用されたことが克明に検証されている。また仏教やキリスト教など、戦前では「戦争賛成」の大合唱をしていたにも関わらず、戦後は戦争責任を神道になすりつけ、みなで靖国神社を総攻撃していることも呆れる構図であった。もちろん、戦前、神道団体が戦争を焚きつけた事実等、どこにもない。


3.行き過ぎた政教分離の果てにあるもの
本書は、靖国を忌み嫌う左翼の批判をあますことなく拾い上げ、それにひとつひとつ反証していく。その地道な作業がすばらしい。

なぜ、左翼は靖国を忌み嫌うのか?
それは靖国が(それを知る日本人も知らない日本人もすべてにおいて)日本人の精神構造を見事に表している場所だからである。だからこの場所を破壊したいのである。

「日本人は自分の無意識に住む宗教心を、知らない」、わたしはここを読んで、ふっと我にかえった。神道がなぜ日本人にとって宗教じみてこなかったのか。

それは神道が他の一神教と比べて束縛があまりにも少なく、あつくるしさを感じなかったからである。太古の昔から先祖崇拝が基底で、八百万の神を信じ、平和裡に暮らしてきた日本の庶民は、皇族のように大袈裟な行事に振り回されるわけでもなかった。このように、生活に溶け込んだ神道は我々が意識するのに及ばない軽さなのである。それは仏教と比べてもはるかに。

その神道に、厳格な政教分離をあてがい一㍉も抵触するなとする左翼の言い分は、もはや日本人を捨てろとすることに等しい。著者はいう。日本がお手本とした米国の政教分離は、そもそも国家が宗教とともに生きるということを前提としており、その上で「特定の宗派だけを優遇しない」と定めたものである。それは「宗派」なのである。左翼も保守もよく読んで法律の趣旨を知るべきだろう。

では、宗教をとことん消し去った先には何が残るのか?
唯物論共産主義だ。

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4.最大の不幸は何だ?
中曽根、小泉、福田等は自分たちを「保守本流」「愛国者」と自称し、左翼は「極右」「軍国主義者」と思い込んでこれを攻撃してきた。左翼はどうだろう? 真のリベラルは共産主義者の扇動に載せられた狂信的な政治家に存在を消され、社会的弱者はいつの時代になっても救われない状態が続いてきた。左翼も被害者がいるが、安倍憎しで国会での膨大な審議時間を有意義に使おうとしなかった責任は大きい。

しかし、中でも、中曽根、小泉、山崎拓等の似非保守の猿芝居にだまされつづけた日本国民が最大の不幸であり、大切な国益を失ってきたと言っても過言ではない。取り返しのつかない大失態である。

自民党は、「いやあれらは政治的妥協」のたまものであると言うが、妥協を超えて、それは国体破壊に近い大失態を犯したことが彼らの意識には微塵もない。

自民党は保守ではなかったのだと、この本を読んでいてようくわかる。
ただの中国と朝鮮の犬、売国党であった。


5.特攻隊の精神性の高さ
 著者は、「特攻隊の遺書を見るたびに、戦前と戦後の、日本人の精神の断絶を感じてしまう」と言う。そのとおりで、わたしも同じ民族なのだろうかと思うほど、特攻隊の精神性の高さに圧倒される。
父母にたいする謙虚な敬愛、愛する妻と子供への惜しみない愛情、しかしどこかもっと崇高な高嶺をめざしたところを魂が求めているのだ。若干20才前後の若者の時世の書に心が打たれて涙がはらはらとこぼれてしまう。

雷に打たれるほどの、この断絶感はなんだろう。
悔しい。

戦後の日本人は狂ってしまった。
GHQに魂を抜かれ、大量の朝鮮人にあちこちを占領され、教育を奪われ、中国人の恫喝に尻尾を巻いて逃げるのが風物詩になった。いまではだれも驚かない。

なにが和の心だ、おもてなしだ。すべては反日国家のプロパガンダに乗せられ踊らされてきただけではなかったのか。英霊に申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになった。

日本を護ろうとする日本人が少数派になったのだ。


6.終戦自決戦者も靖国に眠る
 靖国には、なんと599柱もの終戦自決者が合祀されている。
 終戦日以後に自決して亡くなられた軍人、兵士等である。終戦以後も戦闘機に乗って敵地へ特攻した若い夫婦もいた。敗戦を知り、世の中がイヤになって自決したのではない。彼らのだれもが死んでしか守れないものがあると信じて、自決したのである。

こういった自決者がいた事実を知らなかった自分は、恥じた。


7. 終戦後の戦勝国による報復。それが東京裁判
 いかに東京裁判国際法に違反した裁判であったかがようくわかる。
 BC級裁判として1061人が処刑されているが、日本人がなぜ参戦したのかを訴えてもも聞いてもらえず、米国の原爆投下と被害について発言しようとすると、米国弁護士は強固に反対して発言を遮った。すべてがこの調子で、日本側の弁護は無視され、裁判は形ばかりのものに終わった。

とくに、中国での処刑は苛烈を極めた日本兵をなるべく痛めつけて殺すことができるように、処刑をより残酷にしたという。終戦で世の中が浮かれている時、人知れず、同胞の日本人はこうして世界各所で合法的に見せしめとして殺されていったのである。

日本人が是非とも知らなければならない事実ではないだろうか。
たしかに負けはした。戦略においてミスはあった。しかし、あの時ご先祖様が必死で戦ってくれていなければ、日本はいまの幸せを築くことはできなかっただろう。


靖国を知る上で最高の良書です。ぜひ読んでください。
何度も読んで、この消えかかっている日本を護ろうという気持ちになってください。