倭羊の回し蹴り

この国を憂う。映画・読書ノート、徒然なるままに。

『基礎教養 日本史の英雄』倉山満・おかべたかし著

ばかやろー。
この偉大な国を誇らずにいられるかっっっ!!!
我が国を作ったヒーロー20人のほとばしる生き方を見てみろ。自分がはずかしくなるわいっっっ。

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1.おすすめ度: ★★★★

2.本書を読んだ目的:

倉山満さんの歴史観が大好きだったので選んだ。彼は、いつも本流の歴史観に挑むかのような異端な見方を提示してくれるので楽しみだった。

 

3.本の構成

著 者:倉山満・おかべたかし著

出版日:2016年3月1日 第1刷発行

出版社:株式会社 扶桑社

総 頁:199頁

目 次
1.神武 天皇
2.ヤマト タケル
3.神功 皇后
4.仁徳 天皇
5.聖徳 太子
6.天武 天皇
7.菅原 道真
8.源 頼 朝
9.北条 時宗
10.足利 義教
11.   豊臣 秀吉
12.徳川 家康
13.田沼 意次
14.   高杉 晋作
15.   西郷 隆盛
16.   大久保 利通
17.   伊藤 博文
18.   東郷 平八郎
19.   桂 太 郎
20.   昭和 天皇


概要
日本の歴史をよく知らない。日本に生まれたことを誇りに思えない。歴史なんてそもそも好きじゃない。そんな人が「日本史を理解し、日本を誇りに思い、歴史を好きになる」そんな英雄ばかりがこの本には20人並んでいる。一人5分、計100分で読み切れる。


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文字は横書き。

4.感想

とてもよかった。

中学生が読んでも容易に分かるような良書。大切なことがコンパクトにまとめられていて、ふと見直したい時に役に立つ。わたしはしょっちゅう見直しています。

コラムも多く、計40あるので楽しめる。
1人物につき2コラムの割合。


本書では、英雄を5つの類型に分けてある。

 ①戦って日本を守った人物
 ➁外交で日本を守った人物
 ③内乱を平定した人物
 ④日本に欠かせない為政者
 ⑤日本を転換させた革命家

強いだけが英雄の条件ではなく、武力はないが知略策略に長けていた英雄、また存在しただけで日本の進む道を照らす光となってくれた英雄など、いろいろな側面の英雄が登場してわくわくする。

この中でやはり一番心にのこったのは、日本に欠かせない為政者、であろう。

この類型で出てくる英雄は6人が挙げられているのだが、なるほどそれぞれが超A級の英雄であると納得する。仁徳天皇聖徳太子大久保利通伊藤博文桂太郎田沼意次

とくにおもしろかったのは、ここに田沼意次が入っていることだった。この点などは倉山満氏の独特な歴史観があって、その理由がおもしろかった。

わたしが習った時代、田沼=賄賂政治家、というイメージが強く、当時の国内政治の腐敗を招いた悪徳官僚という印象しかなかったが、本書では、彼こそは日本に資本主義を準備し、徳川吉宗が行った「享保の改革」の優れた点を加速させ、富国強兵を実践して日本を近代化させようとした英雄とある。彼は鎖国を止めて、海外と貿易をして軍備の近代化することの重要性をあの時代に悟っていた。なるほど。

ここのコラムには、徳川将軍15人の通信簿がつくられていて、それを見ると、最も暗愚なのは、田沼が失脚した後の、徳川家斉の50年間だ。鎖国というぬるま湯に甘んじ、対外政策を打たず、日本の近代化を著しく後退させることになった。

日本には偉大な先見の高い偉人が多くいるが、その偉人に妬み、嫉妬し、強く反対する勢力がかならずいる。今とまったく同じだ。田沼は失脚させられてしまったが、もしも彼の改革が長く行われていれば、明治維新はちがった形で行われていたのではないかとも推測される。歴史に if は許されないが、想像するとひじょうに惜しい。


個人的は、北条時宗足利義教のところも心が躍った。

北条は、鎌倉時代、日本に攻めてきたモンゴル朝鮮軍団から日本を守った大英雄であり、足利義政は、初めて青森から沖縄を統一した英雄である。そして、彼も敢然と明朝の振りかざす日本支配の圧力をはねのけた人物でもある。


わたしが不思議に思ったのは、

織田信長がトップ20に入っていなかったことと、桂太郎がランクインしているところ。
意外だったのだが、このように、あれ?なんでこの人が?と思いながら読んでいくことができれば、あなたも多分に日本史フリークになっていると思う。

ちなみに、織田信長が入っていないのは、足利義教を入れたから。

足利義教は、織田信長より200年も前の英雄だが、改革を邪魔する抵抗勢力を容赦なく叩きつぶしたという破壊力の面では織田信長をはるかに超えていた。信長は彼に習ったのではないかと思うほどだ。

桂太郎に関しては、「こういう人も英雄になれるんだよ」的な視点から入れているそうだ。よく知らなかったので勉強になった。
当時、ロシアのアジア覇権を阻むためにはロシアを叩かなければならない。その戦費(日露戦争)を工面するための課税法案を通すことに、彼の温和でユニークな人柄と努力がひじょうに役に立ったという。

いまの日本と同じだ。女と賄賂に浮かれ、短期的な視点でしか物事を考えられないたくさんの売国政治家の中にあって、迫りくる中国の侵略という国家の危機を察知し、国を守り抜くには何が優先事項なのかを見極める政治家が少ない。

桂太郎も苦労がさぞ多かったであろうと感じた。



以上、詳しくは購入されてお楽しみください。

字面やクレームや体裁だけを気にした、または日本の皇統を無視した薄っぺらい歴史本を買うよりは、日本人としての精神性にのっとった理念に支えられているこの本を買って子供たちに読ませてあげることは、親としてとても意味のあることだと思います。

日本独自の精神性をしっかり根本にもつこと。
それは早いうちにこしたことはない。